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「ガンジス川で沐浴」インド旅行記5日目


バラナシはいわずとしれたガンジス川の街。ヒンズー教の聖地なので、インド国内から巡礼者たちが、世界各国から観光客が訪れる場所。

 まさに人の坩堝だった。初日からうすうす気付いていたけど、この頃本気で確信する。「インドやばい……」と。


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 とりあえず、インドは詐欺だらけだった。たぶん、詐欺に遭わないで旅をするのは不可能なんじゃないかと思う。私たちもトータルで7千円くらいは被害に遭った。「だまされた!!」と気付いたときは、プンスカしていたけれど、思い返せば対した額ではない。一人3500円くらい。日々の飲み会の一次会くらいの出費だ。

 私は、この街でインド人のクソガキ(後術するけど、日本語ペラペラの20歳くらいの男の子)と喧嘩しながら「私はインドが嫌いになってしまうかもしれない」と思った。あまりの不衛生さと、物乞いと物売りのしつこさと、ぼったくりと詐欺と、調子に乗ったクソガキのせいで。

 私が騙された、金取られたとどんよりとしていたら、たー坊が「気にしなくていいんだよ。たった7千円だよ。俺たちは日本から来て、騙した人よりお金あるんだから!この国だったらお金持ちだ! くれてやろう!」と冗談を言って笑っていた。たー坊はとてもフラットでスルー力に長けた人だ。「それもそうだ! うちらお金持ちだ! くれてやろー!」と私も笑って元気になった。



 さて、バラナシに着いた日。電車が四時間も遅れるものだから、すっかり夜中だった。

ホテルのレストランはなかなかおいしかった。とは言っても本当に毎日チキンカレーしか食べていない。なんか、メニューはいろいろあるんだけど、本当に何が何だかわからない。わかるメニューがチキンカレーと豆カレーとマトンカレーしかないわけ。私はマトンが食べられなくて、豆が苦手なので、もう選択肢がチキンカレーしかない。たー坊はチキンカレーが大好きらしく、毎日ニコニコだった。よ……よかった。



 旅の醍醐味は夜ふらっと出歩いてお酒を飲みに行くことだと思っているけど、とてもじゃないけど、そんな状況ではない、この国。夜なんてほんと「北斗の拳」のやばいやつだし、だいたい宗教上の理由からお酒を飲む場所がないし。

 早々寝て、明日のガンジス川観光に備えることにした。たー坊は、二日前から抗生物質を飲み始める。ガンジス川で沐浴するんだって! 私が破傷風にでもなったら大変だと思って、シンガポールから個人輸入したあやしげな抗生物質をたー坊はまじめに飲んでいる。大丈夫なんかね。

 

 インド旅行の一番の目的はガンジス川に行くことだった。ずっとガンジス川に行かずして死ねないとさえ思っていた。「インドには呼ばれて行く」と言うけれど、その感覚は少なからずあった。

 ちなみに、ガンジス川は超絶不衛生なので、日本人が沐浴するのは厳禁とされている。

聖なる川といえど、下水垂れ流し、火葬場直結で、遺灰流れまくり、なんなら荼毘に付されなかったご遺体もそのまま流れている。

 沐浴した日本人は、片っ端からお腹壊したり、高熱を出して倒れてたりしている。

入りたいような気もしていたけど、私は清潔な日本でも毎日お腹壊し、毎週熱を出すくらい虚弱なのでパスした。

 たー坊のようなバックパッカーにとっては「ガンジス川での沐浴は集大成」というところがあるらしく、「バックパッカー卒業式」と言っていた。これからはバックパックを下ろして、スーツケースをゴロゴロ転がしながら、リッチな旅をするんだ! そうなるように仕事頑張るんだ! との決意を込めて、沐浴するそうな。

 私も、もし自分が男の子で、バックパッカーで、健康だったら絶対に沐浴していたと思う。だからたー坊を後押し! 「一生のネタになるから入っておいで! 写真いっぱい撮ってあげるから」と。



 朝ホテルを出てオートリクシャーでガンジス川へ5㎞くらい走って100ルピーだから安いね。日本円で150円くらい。メーターは付いているけど、ほとんど機能していなくて、交渉しなくてはいけない。ほんと、疲れちゃうのよ、この交渉が。


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 道路も土で、砂埃が舞い、まったく補正されていない道なので、3輪タクシーでの移動は本当に大変。ちなみにこの前アップした動画はバラナシの渋滞。ずーっとあの状態の人と車と自転車が押し寄せて、全員が鬼のようにクラクションを鳴らしているものだからもう本当に大変な事態だよ。

 インドの街や観光地では勝手に観光ガイドをして勝手に金を取る人がたくさんいるんだけど、ここでもガイドにつきまとわれ続ける。ガイドがさらに詐欺に紹介し、というぼったくり連鎖がまさに「劇場型詐欺」になっているのがすごかった。感心したわ。

 なにはともあれガンジス川へ。たくさんの人が沐浴しています。感動の光景。今インドは雨期で、水位が大変なことになっていた。流れも速くて注意が必要。


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 ガンジス川の中でお祈りしている人はもちろん、シャンプーや、洗濯している人もいる。子どもは泳いで遊んでいるし、赤ちゃんなんて、親にざぶんと頭まで沈められてた。……日本人はちょっとつかるだけで命がけなのに、赤ちゃん沈めちゃって大丈夫なんかね……。うーん。でも、大丈夫なんだろうなー。

 さて。いよいよたー坊が服を脱ぎ始めたよ! 日本人は誰も入っていない。というか、日本人がいない。私はたくさんのもの売りを振り払いながらたー坊の勇姿を見守る。むしろ荷物を全部持って撮影に備える。

 おそるおそるガンジス川に入っていくたー坊。すぐ出ると言っていたわりに、長くお祈りしていた。おお……。すごいぞ、偉いぞ。

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 沐浴終えたたー坊いわく「冷たくて気持ち良かった。汚れている感じも匂いもしなかった。流れが速くて体が持って行かれそうだった」そうな。

 お祈りおえると、ヒンズーの坊さんに勝手に祈られ、お金を取られる。私も、指先だけ沐浴してみた。灯籠みたいな小さなお花がついた線香をおばあさんから受け取り、ガンジス川に流す。そして、おばあさんからお金を取られる。持ってけ泥棒!!

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 その後、有名なラッシー屋さんに行き、ずっとガイドと称してつきまとってきた青年のやってるシルク屋さんに連れて行かれる。750ルピーのシルクのスカーフを購入。もう、闘うのが疲れたんだよ。でも、すごいお店はきちんとしたお店でよかったけど。



 ガンジス川の川沿いの街は、まー荒れ果てていて、野良牛、野良猿、野良犬、野良山羊がうようよいる。車一台通れないような狭い路地を、牛が闊歩しているのだから大変だ。牛の糞は大変なボリュームで、お一人様、洗面器をひっくり返したくらい量のウンをなさる。だから、街中牛の糞だらけで、とにかく下を見ながら歩いていた。怖かった……。


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 どうして、街を綺麗にしないんだろう。

 

 単純な疑問が、どんどん強くなっていくのよ。掃除して、快適に暮らしたくないのかな。仕事なくて物乞いしたり一日中寝て過ごしている人、街を掃除したらどうだろう。

 大金持ちもいる国なんだし、立派な政府がある。

 たとえば予算200万円で、仕事のない100人の人を雇って三日掛けてバラナシを大掃除したらすごい綺麗になるんじゃないの? そうやって雇用作って街を綺麗にするとか、できないの? できるでしょ?? なんでやらないの?? 一日3000円の賃金でも絶対に人が殺到すると思う。

 カースト制度は本当にひどいシステムで、最下層の人たちは何代も続けてトイレ掃除が仕事だったりするんだって。……いやまて。最下層の人口が圧倒的に多い。カーストの上の方の人なんて本当にごくわずか。嫌かもしれないけど、仕事だったら、トイレ掃除しなさいよ誰か!! 

あまりにインドが荒廃し不衛生すぎて、掃除が大の苦手の私が苦言を言いたくなる。

「すぐゴミ屋敷にするこずおが、綺麗にしろ。掃除しろって言うなんてインドはよっぽどだなー」とたー坊が感心していた。



 その後、詐欺に騙されながら火葬場へ行く。ガンジス川のほとりには火葬場があって、インド中の人がここで焼かれている。そして灰を川に流す。ヒンズー教はお墓を持たない。荼毘にふした灰は全部ガンジス川に流すそう。10億人ほどがヒンズー教徒だから、それ全員の遺灰を川に流したらすげーことだな……と戦慄する。


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 ちなみに、火葬できない人もいる。妊婦さん。小さな子ども。障がい者。とかが該当すると言っていた。そういう人が亡くなると、そのまま川に流すんだって。あと、お金がなくて火葬できない人も、そのまま流すそう。

 すごいなあ。ガンジス川。

 火葬場には観光客の出入りが自由で、焼き場にも入れる。私たちが火葬場にいるときも次から次にご遺体が運ばれてきた。

 焼き場は、日本みたいに釜になっているわけでなく、まさに屋外でのたき火。目の前でご遺体が焼かれている。火葬場に誰でも入れるのはインドの文化だから、全然気にしなくていいと言っていた。

 知らない方のご遺体と対面することなんて日本ではまずないし、しかも焼かれていく光景を目の当たりにするなんて、本当に衝撃の体験だった。

 亡くなった方の奥さんやお子さんは、髪を剃って丸坊主にする。その光景も神々しいものがあったよ。

 でも、女性の家族は火葬場に入れないんだって。なぜなら女性は泣くから。家族が泣くと、亡くなった人が成仏できないんだって。なるほどね……。

 私は、日本でのお葬式は男性のほうが泣くイメージがある。インドの男性はきっと我慢強いのだね。

 その後、遺体を焼く薪代を寄付しろという詐欺に遭う。もう、どうでもいいわ。日本円あげました。お財布の中を空アピール。基本的に盗難防止用腹巻きにパスポートや大金を入れていて、手持ちのお財布にはちょっとしかお金いれない。これが詐欺被害を最小限におさえるコツだと思った。詐欺に遭わないのは無理だと思ったから、被害を少なくするの大事だね。



 いったんホテルに戻り、夜再びガンジス川へ。夜のお祈りの見物にいく。でも、あまりの人の多さで目眩がしてくる。今、ヒンズーのお祭りをしているらしく、インド中から人が集まっていた。


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 私はそこでつきまとってきた日本語ぺらぺらの青年と喧嘩をするわけ。しゃべり方とか完全に日本のチャラ男で「えー。なに怒ってんのーーー。え? なに笑ってんの?! うけるんだけどー」みたいな。で、日本人に友達が多いことをすごいアピールしてくる。しかも生意気にもすげー説教してきた。「インド人詐欺ばっかりだと思うのマジやめて」みたいな。結局そいつも、自分の家でサリーを買わせようとしていただけだった。

 でも、私はこの手の詐欺に疲れていたので「もういい。あなたのように親しげに近づいてきた人が、結局お金取るんでしょ? あんたのせいでインド嫌いになりそうだからもうつきまとわないで」と言って脱走。

 私がキレたのに驚いたオートリクシャーの運転手さんが、「あいつは悪いやつだ、ごめんね」と言って、チャイをごちそうしてくれた。

 それは運転手さんにとって、大切でなけなしのお金だから、逆に申し訳ない気分になった。しかも、運転手のおじさんは、うっかりチャイの熱湯を腕に掛けてしまいひどい火傷まで負ってしまう。

 今度は私がショックでたくさん謝った。日本からもってきたステロイドとかあげた。お互い慰めあって、なんだかじんわり。

 そう。インドにはいい人も本当にたくさんいる。基本的にみんな人なつっこくて暑苦しい良い人。でも、インドは「良い人もいれば、悪い人もいる」とは違う。それには該当しない。「悪い人もいる。良い人もいる。でも、良い人も騙してくる」。

 日本に住んでると「詐欺=悪人」って単純に思うけど、そんな単純なことじゃないんだなって思った。

 日本にいる「振り込め詐欺」みたいなのとは、全然違うんだよね。被害が何千万なわけじゃないし、遊ぶ金欲しさの詐欺ではない。

 窃盗や、強盗より、ぼったくりや詐欺が横行しているインド。

 詐欺なりにちゃんとガイドもしてくれるし、おもてなしもしてくれる。

「人を殴って、傷つけてむりやり金を取ろう」とは思わないインド人の感覚を、私は信じたいな、と思う。

 しつこい物乞いも、物売りも、生きるのに、必死なだけ。

 海外の旅行者たち、インド人の目にはどんなふうに映るのかなあ。

 

 一つ言えるのは、私たち旅行者はインド人が思っているほどお金持ちではない。必死に働いて、なけなしの大切のお金で来ている。

 でも、やっぱり今日を生きるお金が必要な人よりは、余裕がある。目の前の人は、私がお金を恵まないと、明日死んじゃうのかもしれない。でも、私はそのお金でビールを飲んだりする。

 どうすれば、バランスよくシェアができるんだろう。

 私が、目の前に施しをすることは、全然シェアではない。



 とりあえず、外国の観光客やNPOに頼らず、核兵器で諸外国を威嚇せず、国内で頑張ってみてよ、と思ったよ。インド頑張れ。



 この日は想うことが多すぎて、取り留めもなくなってしまったよ。

 

 意外とビールを飲む場所があるからほっとしている! キングフィッシャービール、おいしい!

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 ちなみに今日もシャワーはお湯が……(以下自粛 笑)

たー坊は、Facebookに自分の沐浴姿の写真を載せました。「バックパッカー卒業式です」って。
そしたらバックパッカー仲間から「むしろバックパッカー入学式でしょ」だって!

そーだそーだ!
バックパックが似合ってるよ!
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